リーダーシップを発揮する社員の具体的な行動8選
モチベーションとは?
モチベーションとは、「やる気」「動機」などと訳される言葉で、人が何かしらの行動を起こす際の原動力となるものを表します。モチベーションを深く理解するうえで知っておきたいものが、「マズローの5段階欲求」でしょう。ここでは簡単にその概要を説明します。
マズローの5段階欲求とは、アメリカで心理学の博士号を取得したアブラハム・マズロー氏が提唱した理論です。彼のモチベーション研究のなかから生まれたもので、人の欲求は低次から高次まで次の5つに大別できるとしています。
・生理的欲求
5つの段階でもっとも低次の欲求です。「食欲」「睡眠欲」など生きていくために必要な基本的欲求を指します。
・安全欲求
生理的欲求が満たされた後に生じるもので、「事故に遭いたくない」「病気や怪我をしたくない」など、安全で健康に生きていくための欲求です。
・社会的欲求
生理的欲求や安全欲求といった個人の欲求が満たされた後に生まれるものが社会的欲求です。「友だちや仲間が欲しい」「グループや地域の集まりに参加したい」などが該当します。
・承認欲求
ここまで説明した3つの欲求が低次欲求と呼ばれるもので、すべて外発的な要因によって生じる欲求です。そして外発的な欲求によって満たされると、次に内発的な要因によって高次欲求が生じます。
その1つめが、「認知されたい」「尊敬されたい」など周囲からの評判を得たいといった承認欲求です。
・自己実現欲求
5番目の欲求となるのが自己実現欲求です。周囲からの評価を得たうえで、自分が理想とする人物になりたいと願う欲求を指します。
マズローは後に、これらの欲求は必ずしもこの順番に生じるものではないこと、6番目の欲求として他人のために生きたいと願う、自己超越欲求があることに言及しましたが、基本的にはこれらの欲求を満たしたいと願う原動力となるのがモチベーションです。
モチベーションの使い方・用例
前述したようにモチベーションは、「やる気」「動機」などと訳されるため、例えば、「雨が止んでモチベーションが上がったのでジョギングに行こう」「約束していた友だちが来なくなったので料理をするモチベーションが下がった」などといった際に使います。
しかしビジネスにおけるモチベーションは、仕事をするための意欲を引き出す動機付けや組織内での業務意欲といった意味でも使われます。
モチベーションが上がれば業務意欲が湧き、集中して取り組めるため成果を上げやすい状態になるでしょう。逆にモチベーションが下がれば、業務への意欲が薄れミスをしたり、効率が下がってしまったりなどが起きやすい状態になります。
具体的には、「新規案件が取れたのでモチベーションが上がる」「上司から正当な評価を得られずにモチベーションが下がった」などです。
モチベーションの種類とは?
ビジネスにおけるモチベーションは、「内発的モチベーション」と「外発的モチベーション」の大きく2つに分けられます。それぞれの違いは次のとおりです。
内発的モチベーションとは?
自分の内面から湧き上がるもので、自身の判断で、「やりたい」「実現させたい」などの強い意欲でつくられるモチベーションです。
周囲から無理に与えられたものではないため、集中が持続しやすく積極的に行動を起こせます。また実際に実現した場合の達成感もより強いものになるのが特徴です。
ただし外発的モチベーションに比べ、指標が自分の中にしかないため、ゴールが不明確になり、長期化してしまう可能性があります。具体的に何をするべきかが決められないと上手く進まずにモチベーションが下がってしまう場合もあるでしょう。
外発的モチベーションとは?
上司や同僚などによる評価、会社から与えられる報酬や懲罰、取引先からの指示など自分以外の周囲からの影響で人為的につくられるモチベーションを指します。
指標が自分の中ではなく他人にあるため、ゴールが見えやすく何をすべきかも比較的明確です。そのため、短期間で実現できる可能性も高まります。
ただし自分の中から生まれる強いモチベーションではないため、一旦は上がったとしてもその効果は長くは続きません。また行動が他人任せになってしまう場合もあり、能動的に動けず常に指示待ちといった状態にもなりがちです。
内発的モチベーションと外発的モチベーションは、ビジネスを行ううえでどちらも欠かせません。自分の内面から湧き上がるモチベーションが重要なのはもちろん、取引先からの指示に迅速に対応する、報酬や賞与を上げるために行動するのも必要です。ポイントはどちらかに偏るのではなく、バランスを取りながらどちらのモチベーションも下げないようにしていくことでしょう。
モチベーションを上げる方法とは?
実際にモチベーションを上げるためにはどのような方法があるのでしょう。ここでは主な5つの方法を紹介します。
企業のビジョン、ゴールを社員と共有する
企業としてどこに向かっているのか、どのようなビジョンを持っているのかがわからないと社員は全力で業務に取り組めません。そうなればモチベーションをどう上げてよいか見えてこないでしょう。
社員のモチベーションを上げるには、経営層が率先して企業のビジョンやゴールを明確にし、社員と共有することが重要です。社員として何をすべきかがわかれば、モチベーションも上げやすくなります。
多様な働き方の実現
例えば子育てや介護など家庭の事情によりオフィスに出社できない、フルタイムでは働けないといった社員に対し、テレワークや時短出勤など多様な働き方を取り入れましょう。
常に最大限の力を発揮できる柔軟な働き方が認められれば、さまざまな事情を抱えていたとしても社員は安心して仕事に集中できるようになり、モチベーションも上がります。
オフィス環境の整備
オフィスで働く社員に対しても、「カフェスペースをつくり他部署社員とのコミュニケーションを図れるようにする」「集中スペースを設置し、周囲のノイズから離れて業務ができる場所をつくる」など、社員一人ひとりが快適に働ける環境を準備しましょう。
ほかにも、「部署によってフリーアドレスを導入する」「業務内容によって働く場所を変えられるABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)を導入する」など、オフィスレイアウトを工夫することもモチベーション向上に効果を発揮します。
業務プロセスの改善を行う
すべての業務プロセスを洗い出し、課題点の発見・改善を行いましょう。ポイントはいかに定型業務の自動化を進め、生産性の高い業務に集中できる環境をつくり出せるかです。
例えば請求書の作成・印刷・封筒詰め・郵送に丸1日かかってしまっている場合、ペーパーレスを進め、業務の自動化を進めれば余った時間を生産性の高い業務に割り振れます。定型業務が多いとどうしてもモチベーションが下がってしまいがちです。
業務プロセスの改善では、その部分を徹底的に洗い出し、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)や経理管理ツール、営業管理ツールなどのITツール導入を検討しましょう。結果としてモチベーション向上につながります。
定期的に面談の場を設定する
特に内発的モチベーションの低下は外部からでは気づけないケースが少なくありません。そのため、定期的に上司との面談の場を設定し、現状の確認作業を行いましょう。
また、従業員満足度調査などを行って全体の状況確認を欠かさないことも重要です。常に社員の把握をすることがモチベーション低下を防ぎ、維持・向上につながります。
モチベーションを下げる要素とは?
社員のモチベーションを上げる施策を見たところで、次はモチベーションを下げてしまう要素について見ていきます。
日々の業務に追われ本来の業務ができない
顧客からの問い合わせ、突然のトラブル対応などの業務に追われ、本来の業務ができない状況はモチベーション低下の要素となります。
目の前の業務を終えることだけに気がいってしまうと短期的な成果しか上げられず、企業のビジョンやゴールが見えなくなってしまう状況では、モチベーション向上は難しいでしょう。
評価基準が曖昧
評価基準が明確ではなく、人によって差が生まれたりする状況はモチベーションを下げる大きな要素となります。
「自分では十分な成果を上げているつもりなのに正当な評価がされていないと思わせる」「このままでは自分は永遠に昇進も昇給もないのではと不安な状態にさせる」などと社員に感じさせてしまう環境では、モチベーションは向上しません。
社内の人間関係が上手くいっていない
上司を信頼できない、同僚や部下と意見が一致しないなど、社内での人間関係が上手くいっていないと業務以外の不安が増えてしまい、自然とモチベーションも低下します。また、そうした際に親身になって相談できる相手がいないことも大きな問題です。悩みを一人で抱えこむ形になり、業務に対する意欲も湧かなくなってしまうでしょう。
自分の思い描く業務ができない
自分のやりたい業務、理想の業務ができないままだとどうしてもモチベーションを上げることはできません。もちろんすべての社員の理想を叶えるのは不可能です。ただまったく話し合いの場がなく、現状に納得しないまま不満を抱えた状態が続けば、モチベーションは低下してしまうでしょう。
モチベーションマネジメントについて
ここまで見てきたように、社員のモチベーションはビジネスを成功させるうえで大きな影響があります。そこで重要となるものが、社員がモチベーションを上げ、意欲を持って業務に集中できる環境を構築するためのモチベーションマネジメントです。
上司が適切に社員の状況を把握し、「問題がある」「不安を抱えている」状態にある場合は迅速に対応してモチベーションの低下を防ぎます。
具体的な施策としては、「マクレガーのX理論Y理論」「ハーズバーグの動機付け・衛生理論」などが挙げられます。
マクレガーのX理論Y理論によるマネジメント手法
マズローの5段階欲求をもとにした理論で、X理論は性悪説、Y理論は性善説でモチベーションを管理します。
「人は強制しないと業務をしない」といった考え方のX理論では、目標を設定し、その結果に応じて賞罰を与えるマネジメント手法。「人は自ら進んで行動して業務を行う」といった考え方のY理論では、適材適所によって業務や責任を与え社員を動かすマネジメント手法です。
ハーズバーグの動機付け・衛生理論によるマネジメント手法
業務を行った結果得た満足感の原因を「動機付け要因」、業務の環境によって生じた不満の原因を「衛生要因」とし、この2つの要因でモチベーションが決まるとする理論です。
社員のモチベーションを向上させるには、2つの要因の中でも「動機付け要因」、具体的には「業務の達成感」「上司からの承認や認知」「適材適所による業務の割り振り」「責任ある業務での成長機会の提供」などに注力することが重要だとしています。
モチベーションマネジメントの事例
モチベーションマネジメントの事例としては、上司が部下を評価するものだけでなく、「社員間の相互評価制度の導入」「自分がやりたい業務をやるための異動自己申告制度の導入」などが挙げられます。
「社員間の相互評価制度の導入」について、近年では「ピアボーナス制度」を採用する企業が増えています。これは、社員同士で報酬=ボーナスを送り合うことができる制度です。例えば、数値や結果に表れづらい貢献をした社員は、マネジメント層からの評価が行われづらい側面がありますが、ピアボーナス制度なら近くで働きぶりを見ている社員が評価してくれるため、より細かな貢献まで目が向けられるようになります。これにより、社員のモチベーション向上につながるだけでなく、社内コミュニケーションの活性化などさまざまな効果が期待できます。
また、与えられたただ業務をこなすだけではモチベーションの向上は難しく、できたとしても長続きはしませんが、前述した「異動自己申告制」のように一定の権限を与え自らが積極的に業務に関与できる環境を構築することも、モチベーション向上に大きく影響します。
まとめ
モチベーションの維持・向上は年齢や役職によっても異なります。入社したての段階では、ある程度上司のほうから業務を与え、それを達成することでモチベーションは向上します。しかし30代を超えた段階では、ただ与えるだけではなく一定の権限を与え責任感を持たすことがモチベーション向上に大きく寄与するようになるでしょう。全社員を同じようにマネジメントするのではなく、それぞれの社員に対し適したマネジメントを行うことが全社的なモチベーション向上につながるポイントだといえるでしょう。
FCEトレーニングカンパニーでは、社員のモチベーションをあげるきっかけとして、オンライントレーニングシステム「Smart Boarding」の提供を行っています。社員のモチベーション向上に取り組んでいるがなかなか成果が出ないといった際にはぜひ、お気軽にご相談ください。
<参照サイト>
https://www.hito-link.jp/media/column/motivation
https://bizhint.jp/report/99165
https://www.lifeworks.co.jp/cdlabo/column/entry001890.html
https://www.lifeworks.co.jp/cdlabo/column/entry001891.html
https://souken.shikigaku.jp/1591/
https://www.tmj.jp/column/column_11995/