リーダーシップを発揮する社員の具体的な行動8選
はじめに
人材育成は、継続的に企業が成長していくために、必要不可欠な活動の一つです。
「人材」=「人財」といわれることもある通り、企業にとって優秀な人材は財産といっても過言ではないでしょう。
企業として、スキルある人材を育成するためには、どのような活動が必要なのでしょうか。人材育成という観点から持つべき姿勢や、意識すべき目的、そして人材育成における課題について、見ていきましょう。
人材育成とは?
企業成長のためには優秀な人材が欠かせません。優秀な人材を確保し、育成するためには、社員自身の適性や資質ももちろん重要です。しかし、それ以上に人材育成のシステムやノウハウが企業に確立されているかという点も大切なポイントとなります。
人材育成における最大の目的は、社員個人の社会人としての基礎力や可能性を引き出して、企業の業績アップに貢献できる人材に育て上げることです。将来的には企業の成長につながりますから、企業活動において非常に重要な役割を果たしていると考えましょう。
人材育成に取り組むことは、企業サイドとしても「社員育成経験を通して、自分たち自身も成長できる」「人材育成をきっかけに社内で協力し合い、刺激を与え合う風土づくりが実現できる」といった効果が期待できます。
今後の展望も踏まえたうえで企業における事業の在り方を検討し、将来的に企業活動で必要となるスキルを分析・予測しながら継続して人材育成することは、企業自体の成長にも役立ちます。人材育成は、中・長期的な視野を持って取り組むべき事案です。5年後、10年後の企業としての方向性を定め、可能な限りビジョンを明確にし、人材育成のコンセプトを決めることが成功の鍵と考えましょう。
社会人として求められるビジネスマナーやスキルを身につけられる研修に参加することは、社員にとっても一社会人としてプラスに作用します。しかし、企業としてはそこからもう一歩踏み込んだ形で、社員が与えられた仕事のなかで自分の役割を的確に把握し、具体的にどのように行動するべきか自分で考える力を習得することが、人材育成の目的としたいところでしょう。
実際に業務にあたる際に最善と考えられる判断を行い、行動を変化させることにより、業績向上につなげることが、企業としての最終的な目標とすべきところです。
人材育成を行なう目的とは?
今後、あらゆる業界において、人材不足に陥ることが予測されています。そのような状況下において、自分たちの企業が目指すべき成長を続けるためには、自社人材の能力向上が近道です。
企業理念実現、人材不足解消、業務効率化のために、人材育成を行なうということを意識しましょう。
人材育成の主な手法
人材育成は、自社の業態や社風などに合わせたものを実施する必要があります。
企業として現在抱えている課題や、社員のニーズにフィットしたものを導入しなければ、コストと時間の無駄になってしまいます。自社が求めている人材像に近い人材を育成できるよう、研修を行う際にはしっかりとすり合わせをすることが必要です。
人材育成担当者が研修を設定するにあたり実施すべきことには、以下のようなものが挙げられます。
- 組織の現状把握
- 今後、企業が目指す姿の具体化
- そのために必要とされるプロセスの書き出しおよび必要となるスキルの明確化
- 費用対効果などを考慮のうえ、研修方法を検討
具体的な研修方法には、OJTやOff-JT、自己啓発といったさまざまな手法があります。どのようなスキル習得を目標として定めるかによって、研修方法も変わってきますから、まずは上記手順で課題や目的を見極めることからはじめましょう。
育成手法を決めるために役立つ、それぞれの育成手法におけるメリット・デメリットは以下の通りです。
OJT
OJTとは、On the Job Trainingの頭文字をとったもので、職場内研修を指します。
OJTは、業務に必要となる実践的な内容を、上司や職場内の先輩がOJTトレーナーとして直接指導するスタイルの研修です。基本的に、新入社員に対するOJTはマンツーマンで実施されます。
指導する側のOJTトレーナーも、指導を受ける部下も、お互いにその研修を通して成長できる点がメリットとして期待できます。
一方で、教育する側であるOJTトレーナーのスキルや知識が不足している場合、期待する人材育成に結果として結びつきにくいデメリット、リスクもあります。社会人として活躍するために求められる社員の「自律性」や「主体性」を促進する教育については特に難しく、個人のそれまでの経験や持って生まれた性格、考え方、知識に即した教え方やサポートが必要となります。それを職場の先輩だけで担うというのは、難しいというのが現状です。この点は、OJTの大きな課題といえるでしょう。
各部門において、人事担当者は管理職やリーダーに対して研修を実施し、OJTをサポートすることが必要となります。
Off-JT(集合研修/職場外研修)
OJTに対して、職場から離れた場所で能力開発に取り組む研修を集合研修、職場外研修、またはOff-JTと呼びます。業務とは切り離した形で、職場とは異なる研修会場で行われるスタイルが一般的です。
Off-JTは「Off-The Job Training」が語源で、外部から指導者を招いて研修を実施します。授業形式・座学で行なわれるものが多く、一斉に受講するスタイルとなります。現場で受ける実践に近い研修であるOJTと、体系的な知識としてビジネス基礎やマナーを学ぶOff-JTはまったく別物であると考えましょう。
Off-JTではグループ研修を導入するケースも多く、受講者同士でグループワークに取り組みながら親交を深めたり、普段は直接関わりのない部署に属している社員同士がコミュニケーションを図りながら作業を進めるなど『同じ会社に属する仲間』という意識づけが強まり、愛社精神が高まるメリットもあります。
Off-JTでは、以下のような講座が開講されるケースが多いようです。
- ビジネスマナー研修
- コミュニケーション能力研修
- ロジカルシンキング研修
- マネジメントスキル研修
- 人事評価制度講座
- 情報セキュリティ講座
- グローバル人材育成セミナー
Off-JTは外部講師を招き、職場とは違う会場で行なうため、その分費用が発生するといったデメリットも存在します。
また「研修内容を吟味し、その内容を満たすためにはどのような講師が適切か」といった選択も必要で、企画段階での困難もあるということを認識しておきましょう。
自己啓発
自己啓発はSelf Developmentの頭文字をとってSDとも呼ばれ、スキルアップ・キャリアアップに役立つ資格取得などが目指しやすい環境を企業が提供する制度です。
SDには、具体的に社内・社外でのセミナーへの出席や各種勉強会への参加、書籍での学習、資格取得講座通学など、さまざまな方法があります。SD促進を目的として、通信教育受講料の補助や、資格を取得するとお祝い金を出す企業も多いようです。
SDは、OJTやOFF-JTとは異なり、自分が必要性を感じたときに学ぶことができる点が大きなメリットです。時間や場所が限定されたり、強制されるのではなく、あくまで自分で学ぶ場や学習時間を調整するため、ライフスタイルに合わせた形でスキルアップを目指すことができます。隙間時間を活用してスキルアップできるというのは、日々の業務で忙しい社員にとって大きな魅力といえるでしょう。
逆にいえば、この自由度の高さ、つまり強制力のなさがSDのデメリットでもあり、途中で挫折してしまうケースも多いようです。自分を律して学習を進める必要がある点や、周囲と励まし合いながら切磋琢磨する環境下ではないということから生じるデメリットと考えられます。
これまで見てきたように、人事担当者はさまざまな研修方法があることを理解し、そのうえでスキル習得にあたりどのような研修が一番効果的なのかをよく検討し、コスト面と合わせて選択する必要があります。また、一つの研修方法に決めて行うというよりは、目的に応じて研修スタイルを変更する柔軟性も必要です。
OJTの前に、Off-JTによるビジネスマナーやビジネス研修を実施しておけば、ベーシックなビジネススキルは習得済みであることを前提に、職場で業務と並行しながらOJTを受けることが可能です。
入社後、いきなり現場実習となるOJTを行うよりは、新入社員サイドとしても安心感を持つことができます。さらにOff-JTで習得したことをOJTで実践できるため、即戦力として活躍できる状況を整えることにもつながります。
また、自分が必要を感じた時にSDを活用できるような制度が整っていれば、社員は自分のタイミングでスキルアップや資格取得を目指して学習することが可能です。
費用的な問題があるため、すべてを導入するのは難しいかもしれませんが、必要に応じて適宜取り入れられるように基本的なシステムを確立させておくのもいいでしょう。
人事育成の種類について
人事育成を実施する対象には新入社員、中堅社員、管理職などが存在し、それぞれ育成目標が異なります。
新入社員対象の研修は、社会人としての基礎を習得することを目的とするのが一般的です。
これに対して、中堅社員に対しては周囲のメンバーを指導できるような、より専門的なスキルや知識を身につけることが目標となります。また、部下を評価する立場にある管理職の場合は、マネジメントや人事評価を適切に実施するスキルの習得を目指します。
このように、対象によって行なうべき育成の種類が異なるということも、理解しておく必要があります。
人材育成に必要なステップ
人材育成に必要となるステップには、どのようなものがあるのでしょうか。3つのステップをご紹介します。
ステップ①人材育成の課題やニーズを各部門からヒアリング
まずは、人材育成の課題となっている点やニーズを各部門からヒアリングします。現場の課題を明確化し、その課題解消を目指すためにどのような取り組みが必要かを見極めるためです。現場の課題把握には各部署、各年次、各階層の社員がその部署には何名在籍し、どのような職務を遂行しているのかを把握する必要もありますので、必ず押さえるようにしてください。
また、生産性についても踏み込んで調査する必要があります。現場を理解するために、若手や中間層の社員に直接話を聞き、現場が抱えている課題を理解し、その課題を研修実施で解消可能かを検討します。
周囲から助言を受ける機会が減少していることが想定される管理職からのヒアリングでは、現状抱えている課題を明確化するには難しさもありますが、現状を曖昧にせず、克服すべき問題点をしっかりと洗い出しましょう。
ステップ②企業の経営方針や今後の展望などを確認したうえで、人材育成に何が必要か検討
組織全体、部署ごとの課題明確化が完了したら、企業の経営方針や今後の展望などを確認したうえで、人材育成に何が必要かを企業という大きな枠組みで捉えます。人材育成担当者は、今後その組織がどのような人員構成を目指しているのかを想定し、具体的に落とし込む必要があるためです。「10年後、生産性を30パーセントアップさせるためには、製造部門を増員する必要がある。そのためには、設計スキルを持つ人材をあと5名は育成しなくてはならない」など、具体的に数字として認識し、会社全体の発展を前提に検討しましょう。
ステップ③最終的に、経営者と方向性のすり合わせを行なう
また、研修を実施する前には、経営者と方向性のすり合わせを行なうことも必要です。経営者は目先の事業だけでなく、今後発展させたい方向や企業の成長維持についても視野にいれたうえで、人材育成を考えています。先を見通せる力やリーダーシップ、環境の変化に対応する柔軟性などを、社員に身につけて欲しいと考えているケースが多いのです。
人事育成担当者は、即戦力を育成したい現場と長期的に考えてリーダーを育成したい経営者の両者が納得できるような形に落とし込み、研修計画を立てる必要があります。こうしたプロセスを経て実施される人材研修は、高い効果が期待できます。研修で習得した知識と、職場で実践的に得る経験・知識の相乗効果で、体系的な力を身につけられるシステムを構築しましょう。
まとめ
人事育成は現場レベル、経営レベルでの課題を見極めたうえで対象と目的を定め、実施する必要があります。手法としてもOJTやOff-JT、SDなどから、そのメリット・デメリットを理解したうえで導入を検討しましょう。
一つの方法で研修を行うよりも、複数の手法を導入して、組み合わせながら人材育成に取り組む企業が多い傾向にあります。目的によって最適な研修方法は異なるため、臨機応変に対応する姿勢が人事育成には必要です。
社員のモチベーション維持のためにも、研修をうまく取り入れ、企業全体の業務効率をアップさせていくことが、継続的な企業の成長につながります。未来への投資と考え、社員にとっても経営側にとってもメリットある研修スタイルを確立させましょう。