リーダーシップを発揮する社員の具体的な行動8選
はじめに
組織に所属する人間は、「リーダー」「フォロワー」「メンバー」という3つの種類に分けることができます。プロジェクトの達成には、これら3者がリーダーシップ、フォロワーシップ、メンバーシップを発揮し、それぞれの役割を果たすことが重要です。なぜなら、管理職がリーダーシップを発揮することは重要ですが、それだけでは企業が成長を続けることは困難だからです。環境の変化を乗り越えていくためには、社員全員のメンバーシップを高め、自走できる組織を構築しなければなりません。
本記事では、メンバーシップの重要性や、メンバーシップのある組織を構築するポイントについて徹底解説いたします。
メンバーシップとは
メンバーシップとは、「構成員(メンバー)が自己の役割を果たすことによって、組織全体に貢献する能力・行動」を意味します。「自分自身に与えられた仕事」を確実にこなすことはもちろん、「ほかのメンバーが困っていたら手助けすること」もメンバーシップにおける大切な要素です。
メンバーシップは、リーダーシップやフォロワーシップとは異なります。
リーダーシップは「組織を引っ張っていく指導者(リーダー)としての能力・行動」という意味です。この単語は、昔から日常会話の中でも使われてきたのでご存知の方が多いでしょう。
また、フォロワーシップは「リーダーを補佐する者(フォロワー)が、能動的・自律的に考え、行動し、主体的に組織に貢献する能力・行動」を意味します。米国カーネギーメロン大学のロバート・ケリー教授が1992年に著書『The Power of Followership』の中で提唱した比較的新しい概念です。
さらに、近年になって重要性が叫ばれるようになってきたのが「メンバーシップ」という概念です。なお、フォロワーシップとメンバーシップの違いは役割にあります。「リーダーを補佐する役割を果たして、チームに貢献」するのか、「自分自身の役割を果たして、チームに貢献」するのか、この違いです。
メンバーシップの重要性
メンバーシップとは、「自己の役割」を中心に捉えた概念であり、リーダーシップやフォロワーシップを包括するものと考えることもできます。
管理職であれば、「リーダーシップを発揮すること」がメンバーシップを発揮することと同等であり、管理職の補佐をする立場であれば、「フォロワーシップを発揮すること」がメンバーシップを発揮することと同等です。
そもそも、誰がリーダーで誰が補佐役なのかは、場面ごとに入れ替わるケースが多いのではないでしょうか。
例えば、部長や課長は、「部」や「課」といった枠組みの中では管理職としてリーダーシップを発揮することが求められます。しかしながら、社長の前ではフォロワーシップが求められるでしょう。
大切なのは、組織の一員として各自の役目をしっかりと果たすことです。メンバーシップが高まり、与えられた仕事を誠実に遂行するとともに、自律的にほかのメンバーへ協力することを惜しまない社員が増えれば、企業の成長にとってプラスになります。
メンバーシップは、「モチベーションの向上」「チームの一体感向上」「業績の向上」という3つの点で重要です。以下、それぞれについて詳しく説明していきます。
モチベーションの向上
メンバーシップは「自己の役割」を中心とした概念です。主体性や自律性がカギとなっているため、当事者意識が向上します。メンバーシップを高めれば、「上司の命令だから、仕方がなく引き受ける」というようなネガティブな感情を取り除くこともできるでしょう。
また、メンバーシップを高めなければ、「自分の役割を理解しておらず、意欲が低い」「主体性や当事者意識がなく、指示待ち・受け身な傾向が見受けられる」という社員が増えてしまうかもしれません。
他者から命令されたり強要されたりするのではなく、自ら能動的・積極的に役割を果たして達成感を得ることができれば、モチベーション向上に役立ちます。モチベーションの向上は、社員の幸福度・満足度・充実度の上昇に寄与するだけではありません。社員が意欲的に業務を遂行すれば業績が向上し、結果的に会社全体の成長につながります。メンバーシップを高めれば、社員と会社がWin-Winの関係になれるでしょう。
チームの一体感向上
会社の業績を伸ばすためには、「リーダーが指示をし、フォロワーが補佐をする」という上意下達の関係だけではなく、メンバー相互が互いに助け合う関係を構築することも大切です。ほかのメンバーと協働すれば、シナジー効果によって1人では不可能なプロジェクトも実現できます。
会社に限らず、組織に所属する際には、「ほかのメンバーと一緒に何かを成し遂げる」という目的があるケースが多いのではないでしょうか。ほとんどの仕事は、誰かと協力して進めていくものです。チームを組んで一緒にプロジェクトを成し遂げるためには、一体感を持って業務に向き合わなければなりません。孤立して1人で仕事をするのであれば、会社に所属する意義は薄いでしょう。
業績の向上
会社には多数の社員が在籍しており、社員一人ひとりの業務に対する取り組み方が業績を左右します。社員が「上司に命令されたので、仕方がなく仕事をする」という意識なのか、「この仕事をしていると、満足感・充実感を覚える」という意識なのかによって、業務の効率が大幅に変わってくるのではないでしょうか。
メンバーシップを高めれば、社員一人ひとりが主体的・自主的に業務に取り組むようになり、会社の業績向上につながります。過去、第一次産業や第二次産業の割合が大きかった時代は、上司の指示に従って業務を遂行する社員が評価されました。しかし、第三次産業が主流になってきた現在は、受け身ではなく、新しいアイデア・サービスを発案する能力が求められます。
近年の変化の激しい経営環境においては、メンバーシップを高めることによって、指示がなくても自走できる組織をつくることが重要です。
メンバーシップのある組織を構築するポイント
メンバーシップのある組織を構築するために重要なポイントは以下の4つです。
(1)メンバーシップの重要性を理解させる
(2)メンバーシップを培う機会を設ける
(3)個人の役割を明確にする機会を設ける
(4)チーム内コミュニケーションを活性化させる
それぞれについて詳しく説明していきます。
メンバーシップの重要性を理解させる
まず、「会社の業績がアップする」という会社にとってのメリットを社員に教えましょう。同時に、「モチベーション向上によって充実度や満足度が増すため、社員自身へのメリットもある」という情報も伝えなければなりません。そして、「自分自身の役割を主体的に果たすことで、結果として会社のためになる」という点を説明してください。メンバーシップのある組織づくりには、「各自が主体的・自律的に行動すれば、これまで以上に仕事において達成感を得られる」という情報を社員全員に共有することが大切です。
構成員一人ひとりが重要性を理解しなければ、メンバーシップのある組織を構築できません。パンフレットを作って配布する、社員全員に一斉にメールを送るというような方法で周知徹底を図りましょう。研修やセミナーを開催し、「メンバーシップとは何なのか」「なぜ会社や社員にとって重要なのか」を丁寧に教えることも有効です。
メンバーシップを培う機会を設ける
メンバーシップを高めるためには、メンバー同士の相互理解や信頼を醸成することが重要です。ただし、相互理解や信頼は、自然発生的に得られるものではありません。さまざまな仕掛けが必要です。例えば、社内でイベントを開催してゲームやスポーツをすることも手段のひとつといえるでしょう。特にサッカーや野球といった「チーム」でプレイするスポーツは、メンバーシップの醸成に役立ちます。
なお、新型コロナウイルス感染症が流行している影響によってテレワークが主体になり、オフィスに来る社員が少ない会社があるかもしれません。そのような場合でも、メンバーシップを培う機会を設けることは可能です。例えば、「オンライン飲み会」「オンラインお茶会」「オンラインランチ会」などを開催することによって、社員同士の親睦を深めてみてはいかがでしょうか。「オンライン」での親睦会に積極性がない場合、開催にインセンティブを出すなど、制度の見直しも視野に入れてみましょう。
個人の役割を明確にする機会を設ける
「各人の役割を果たすことが大切」と言われても、具体的に何をすればよいのか分からない社員がいるかもしれません。組織全体として、社員の役割を明確化しておくことが重要です。
チームの中には、「阿吽の呼吸」で何となく各自が業務を分担しているというケースがあるかもしれません。しかし、各自の役割が曖昧な集団の場合、「誰かに面倒な仕事を押し付けて、自分自身は楽をしている社員」が潜んでいる可能性があります。これでは、押し付けられている社員に不満が蓄積されていき、チームがひとつになって、ともに成長することが困難になるでしょう。
一度、各自の役割を明確にする機会を設けるほうが、組織全体にメンバーシップを浸透させることにつながるのではないでしょうか。
チーム内コミュニケーションを活性化させる
チーム内のコミュニケーションを活性化させることも、メンバーシップを高めるために有用です。具体的には、以下のようなイベントを企画してみてはいかがでしょうか。
- 歓迎会、お花見、忘年会、ランチなど、一緒に飲食する機会を設ける
- 運動会、隠し芸大会、旅行などを企画し、計画や練習の段階を含めて長い時間をともに過ごす
業務時間外に一緒に飲食をすると、自然とコミュニケーションが活性化するでしょう。また、サッカーや野球などチームワークが重要なスポーツをすると、楽しみながら「自分の役割に応じた行動」が自然にできるようになります。また、普段から、社内サークル活動を行うこともコミュニケーション活性化に寄与します。
なお、新型コロナウイルス感染症が流行している事情もあり、イベントを開催することが困難かもしれませんが、通常業務の中でコミュニケーションの活性化を図ることも可能です。
例えば、「SNSやチャットツールを導入し、情報共有を密にする」「メンターをつけて、困ったときに相談できる仕組みをつくる」「オンライン会議の冒頭5分間は雑談タイムにする」というような方法を取り入れてみてはいかがでしょうか。
コミュニケーションをとる際は、全員が情報の発信者になることが大切です。人間は集団においてどうしても「場をまとめて、指示を出す者」と「指示に従う者」に分かれてしまう傾向があります。意識的に誰もが主体的に情報発信を行なっていけば、メンバーシップが高まるでしょう。
まとめ
さまざまな組織・集団において、所属する構成員を「リーダー」「フォロワー」「メンバー」のいずれかに分類することができます。ただし、これらは固定的なものではなく、流動的といえます。ある場面ではリーダーだった者が、別の場面ではフォロワーになるケースがあるという点に留意してください。例えば、「課長」は「課」の中では「リーダー」ですが、社長の前では「フォロワー」になります。
リーダーが「リーダーシップ」を発揮し、フォロワーが「フォロワーシップ」を発揮することが、組織にとって重要です。ただし、近年、メンバーが発揮すべき「メンバーシップ」の重要性も指摘されるようになってきました。メンバーシップとは、「構成員が自己の役割を果たすことによって組織全体に貢献する能力・行動」を意味します。「自己の役割」を中心に捉えた概念であるため、メンバーシップが高まれば、社員が主体的に業務に取り組むことを期待できるでしょう。
「モチベーションの向上」「チームの一体感向上」「業績の向上」という点で、メンバーシップは重要です。結果的には会社の業績アップにつながることになり、社員と会社の双方がWin-Winの関係を築けます。なお、メンバーシップのある組織を構築するためには、メンバーに対して、メンバーシップの重要性を理解させ、メンバーシップを培う機会を設けることだけでは不十分です。さらに、個人の役割を明確にする機会を設け、チーム内コミュニケーションを活性化させる必要があります。
本記事が、メンバーシップを高めて自走できる組織を構築する方法について知りたい方のお役に立つことができれば幸いです。