リーダーシップを発揮する社員の具体的な行動8選
新型コロナウイルス感染症が流行してから、「テレワーク」という勤務形態が急速に広まりました。会社に出退勤する必要がないため、自由に使える時間が増える点がメリットです。なお、テレワークにおいても、ビデオ会議などを利用すれば表情を見ながらコミュニケーションをとることが可能です。
しかし、常に顔と顔を向かい合わせているわけではないため、部下が仕事をしっかりとやっているのか不安に感じる管理職がいらっしゃるかもしれません。また、部下の立場からも、上司がどのように人事評価を行うのか知りたい方が多いのではないでしょうか。
テレワークを導入すると、オフィスで勤務する場合とはさまざまな点で変化が生じるため、人事評価の仕組みについても見直さなければなりません。
そこで、本記事では、テレワーク導入に伴って人事評価制度を見直す際のポイントについて徹底解説いたします。
昨今のテレワーク需要の高まりとその背景
2020年初頭、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが発生しました。2021年になっても、世界各国で深刻な影響を及ぼし続けています。コロナ禍において、人と人との接触を少なくすることが求められることとなり、「テレワーク」という働き方が急速に普及しました。
テレワークは、ICT技術(情報通信技術)を利用して自宅などから業務を遂行する勤労形態です。勤務場所は必ずしも自宅に限定されるわけではありません。サテライトオフィスやホテルなどインターネットに接続できる環境が整っている場所であれば、どこでも業務に従事できます。
なお、コロナ禍以前から総務省や厚生労働省はテレワークを推進しています。意義や効果としては、以下のような点が挙げられます。
- 少子高齢化対策の推進(育児・介護と仕事の両立が可能となり、労働力人口減少をカバーできる)
- ワーク・ライフ・バランスの実現(家族と過ごす時間や余暇が増加)
- 地域活性化の促進(首都圏から地方への移住者の増加)
- 環境負荷の軽減(通勤減少による二酸化炭素排出量の削減など)
- 生産性の向上(柔軟な働き方の実現により、有能・多様な人材を確保し、流出を抑制)
- 営業効率・顧客満足度の向上(オフィスにいる時間が減り、顧客訪問回数・滞在時間が増える)
- コスト削減(オフィス賃貸料や消耗品、交通費などを削減できる)
- 災害時における事業継続(勤務地を分散化することにより、大地震やコロナ禍でも業務継続が可能)
このように、新型コロナウイルス感染症の流行抑制という理由以外にも、さまざまなメリットがあります。すべての業種・職種で導入できるわけではありませんが、事務系の職種に対しては導入が比較的容易です。まだ導入していない企業は、テレワークを検討してみてはいかがでしょうか。
テレワークにおける人事評価制度の問題点
新型コロナウイルス感染症の流行に伴ってテレワークを導入した(あるいは、する予定)という企業も多いでしょう。テレワークはさまざまな利点がありますが、「働いている様子を常に目で見ることができない」という問題点が存在することも事実です。
以下、テレワーク導入後、人事評価を行う際に生じる問題点をご紹介していきます。
勤務態度が見えづらい
オフィスに出勤して仕事をしていれば、業務への取り組み方や意欲を直接確認することが可能です。
なお、テレワークであっても、打ち合わせの際にビデオ会議システムなどを利用して表情を見ながら会話するケースが多いため、まったく顔を見ずに仕事をするわけではありません。
しかし、オフィスで常に一緒にいる状況とは異なり、多くても1日に数回程度しか様子を確認することができないため、「まじめに仕事をしているかチェックしにくい」という問題があります。
勤務時間が管理しづらい
テレワークでは、途中で席を外していても、上司や同僚によって把握されることはありません。ビデオ会議で打ち合わせする時間帯だけパソコンの前に座り、それ以外は外出することも可能です。
もちろん、「業務が大幅に遅延している」というような事情があれば、「途中でさぼっているのではないか」という推測が可能です。しかし、小幅な遅延に留まっている場合は、定められた勤務時間に仕事をしているかどうか確認することが困難なケースもあるでしょう。
面談しづらくコミュニケーションも不足しやすい
ビデオ会議システムを使えば、テレワークでも表情を見ながら会話することは可能です。これは、1対1や数名程度の人数であれば有効な手段です。
しかし、「何十人もが一堂に会し、周囲の席の人と議論を交わす」「社員全員を集めて、社長から口頭で重要事項を伝達する」といったコミュニケーション方法の代替にならないケースが多いのではないでしょうか。
また、「オフィスの中ですれ違った際のちょっとした雑談」といった偶発的なコミュニケーションも発生しません。
評価基準がばらばら
テレワークに限ったことではありませんが、評価する人物によって基準がばらついている場合、従業員に不満が蓄積します。
テレワークでは、上司によって評価方法の差が広がる可能性があるので注意しましょう。ある上司は成果物の内容、結果のみで評価するかもしれませんし、別の上司はビデオ会議における発言や態度、熱意といった要素を重視するかもしれません。
人事評価プロセスの遅延
オフィスの会議室では、隣の席の人とだけ小声で会話し、会話相手の声だけ聴き取ることも可能です。
しかし、ビデオ会議で複数人が議論する際は、「隣の人と小声で会話」といった対応がスムーズにできないのではないでしょうか。
また、大量の書類のページをめくって一緒に見ながら説明するような場面では、対面しているほうがやりやすいことも事実です。
テレワークでは密な相談がしにくく、人事評価担当者同士のコミュニケーションが阻害され、時間がかかってしまう可能性を否定できません。
テレワークの人事評価見直しのポイント・対策
以下、テレワーク導入に伴って人事評価の方法を見直す際のポイント・対策について説明いたします。
評価方法の統一
テレワークにおいては、評価方法の統一が重要です。上司によって成果主義的に評価するケースがあったり、業務プロセスを重視するケースがあったりするような不公平な人事評価制度では、従業員の不満が蓄積します。
「会社のために貢献したい」という気持ちを湧き起こすためにも、公平な評価制度は不可欠です。評価を行う担当者の間で、あらかじめ基準を統一しておきましょう。
評価項目の明確化
評価方法を統一するうえで重要なことは、評価する項目を明確にすることです。その際は、テレワークという働き方に合わせた項目を設定しましょう。
可能な限り、業務スピード、レスポンスの速さというような定量的に計測できる項目を選択し、社内で共有してください。ただし、数値化が困難な「モチベーション」のような項目を含めてはならないというわけではありません。ビデオ会議などで発言や態度をチェックすることで評価することが可能です。
大切なのは、評価者の裁量で項目を選定するのではなく、あらかじめ明確化して全社的に共有しておくことです。
目標管理制度の導入
常にオフィスにいるわけではないため、テレワークでは従業員の自律性・主体性が求められます。
隣で上司が働きぶりをチェックできないテレワークでは、経営学者ピーター・ドラッカーが提唱した「目標管理制度」の導入が有用です。英語では「Management by Objectives」(MBO)であり、「目標による管理」とも訳されます。
目標管理制度では、「あらかじめ個人と会社の目標の方向をすり合わせたうえで、従業員自身で具体的な目標を設定し、評価者との間で合意を形成する」という手順が用いられます。従業員が自ら進捗状況を管理し、設定した目標の達成度によって評価が行われます。
目標管理制度を導入すれば、従業員が主体的・自律的に業務に取り組むことを期待できます。
また、事前に設定した目標に沿って評価が行われることになるため、テレワークでも公正な人事評価制度を実現可能です。
人事評価プロセスの改善
人事評価プロセスを工夫し、テレワークに適した方法に改善することも必要です。人事評価は、複数の評価者がさまざまな情報を分析し、ディスカッションして決定することが多いのではないでしょうか。
しかし、評価を行う側もテレワークをしている場合、会議室などに書類を持ち寄ってミーティングを行うことは困難です。人事評価プロセスを改善し、オンラインで情報共有できる仕組みを導入すべきでしょう。
プロセス評価と成果評価のバランスの見直し
従来の人事評価制度では、業務プロセスを重視するケースが多く見受けられました。しかし、テレワークでは、仕事に取り組む様子を常に確認することができません。そのため、成果主義による評価を重視する方向に移行することをおすすめします。
ただし、業務プロセスに対する評価もある程度は残し、成果を出せない従業員に対するフォローも行いましょう。
ITツールの活用
テレワークを導入すると、評価を行う側も受ける側も別の場所で勤務することになります。そのため、ITツールを積極的に活用し、業務実態の把握に努めなければなりません。
例えば、PCの操作履歴などを収集・分析するツールを導入すれば、勤務時間などの管理に役立ちます。また、ビデオ会議システムを使えば、オンラインで面談を実施できます。
テレワークにおける人事評価制度の事例
「テレワークにおける人事評価制度の具体例を知りたい」という方に向けて、GMOペパボ、カルビー、日産自動車の事例をご紹介いたします。
GMOペパボの事例
GMOペパボでは、2018年末頃から準備をしたうえで、2020年1月からテレワークに対応した新しい人事評価制度が実施されています。特徴は、以下の通りです。
- 全職種共通の等級制度を導入
- 毎月1回、人事評価のためのオンライン面談を実施
- 社員全員に評価資料を公開(他人の資料も閲覧可)
- こまめなフィードバックの実施
ほかの社員の評価資料も自由に閲覧できる点が、公正な人事につながっているのではないでしょうか。
カルビーの事例
カルビーは、2009年からテレワークの導入を開始し、2014年に事務間接部門の従業員を対象として本格的な導入を行いました。また、経営刷新に伴い、人事評価制度が以下のように変化しています。
- プロセス主義から成果主義に変更
- なるべく定量的な目標を設定し、達成率に応じてインセンティブを支給
事務職だけではなく、営業職も内勤時間・残業を減らすためにテレワークが可能となっており、どこでも業務を遂行できる運用体制が構築されています。
日産自動車の事例
日産自動車では、2006年にテレワークが導入されました。当初は「育児や介護と仕事の両立をするため」という事情がある社員に限定されていましたが、2014年から全従業員がテレワークを選択できるようになっています。
日産自動車では、テレワークの導入に際して以下のような業務ルールや人事・労務管理制度を導入しています。
- 業務を可視化
- 週に1回、業務の棚卸し(PDCA)を行う
- 業務の開始時と終了時に上司に報告(15分以上の離席をする場合、不在時間を連絡)
- 会社支給のパソコンを使用し、社内ネットワークにログインして作業
このように、業務を可視化したり、「15分以上の離席をする場合、上司に連絡をする」というようなルールをつくったりしておけば、怠業を防止し、適正な人事評価を行えるのではないでしょうか。
まとめ
新型コロナウイルス感染症の流行を契機に、テレワークを導入する企業が増加中です。テレワークは、コロナ禍以前から総務省や厚生労働省が推進していた勤務形態であり、感染症流行を抑制すること以外もさまざまなメリットがあります。
テレワークの導入に際しては、人事評価制度も見直さなければなりません。従来のオフィスワークにおける人事評価制度と同じ仕組みを使い続けることはやめましょう。