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ブレンデッド・ラーニングとは?
新型コロナウイルス感染症の影響で注目が集まっているブレンデッド・ラーニングですが、実は10年以上前から学習方法のひとつとして確立されていました。
ブレンデッド・ラーニングとは、言葉のとおり対面形式の学習と、eラーニングでの学びをブレンドする学習スタイルです。
オフラインとオンラインそれぞれの特性を上手に活用することで、より効率よく、効果的に学習を進めることが可能となります。
従来型である教師発信・受け身型の教育では、これまでに前例がないような課題の解決や、新しいものを創出するといった自分発信で課題に取り組む姿勢や積極性を高められる学びとしては不十分でした。
そのような時代の流れと、急速なインターネットの普及により注目を集めたのが、ブレンデッド・ラーニングです。
ブレンデッド・ラーニングは、カリキュラムに沿った一方的授業を多数の生徒が受講する従来型の教育スタイルとは一線を画し、学習者主体で学習を進める、新たな教育アプローチとされています。
一般的な流れとしては、学習前診断としてネットテストを受験し、eラーニングを受講後、改めて理解度を診断するネットテストを受験します。
このプロセスのなかで前提となる知識を習得し、集合学習を受講するスタイルです。
集合学習受講後に、フォローアップとして後日改めてネットテストを開催するのも、学習意識を高めるために有効な手法といえるでしょう。
ブレンデッド・ラーニングが注目されている理由
ブレンデッド・ラーニングは、一人一台タブレットやスマートフォンといったデバイスを所持する現代にフィットした学習方法として評価されています。
ICT技術革新により、大容量のコンテンツの閲覧や視聴、利用やダウンロードが可能な学習環境を、学習者は個人で整えることが可能となったためです。
ツールさえそろっていれば、学習は手軽に始めることができます。
ブレンデッド・ラーニングは、学習者はまずeラーニングで学び、その際に生じた疑問を対面での授業で解消し、授業後は復習として動画を繰り返し視聴して知識定着を図るというスタイルで進められます。
学習者は、自分のペースで仕事やプライベートのバランスを取りながら、学習を進めていくことが可能となります。
接触機会軽減が可能なハイブリッド型の学習方法であるブレンデッド・ラーニングは、withコロナの時代において非常に有効な学習方法として、さらなる注目を集めています。
ブレンデッド・ラーニングのメリット
続いて、ブレンデッド・ラーニングのメリットを見ていきましょう。
インプットとアウトプットの場をそれぞれ提供できる
eラーニング学習の場合、アウトプットする場に恵まれず、どうしてもインプットに偏ってしまう傾向があります。
しかしブレンデッド・ラーニングの場合、集合学習の場を設けられているため、その機会に講師へ質問したり、受講生同士ディスカッションをしたりといったアウトプット経験を重ねることが可能です。
eラーニングで身に付けた知識を実際に資料作成やロールプレイ、人前でのプレゼンテーションなどで実践することにより、実際に現場でどのように知識や理論を活用すればよいのかを学習できます。
理論武装するだけではなく、それを現場で活かすための経験値を習得する場を、ブレンデッド・ラーニングでは得ることが可能なのです。
eラーニングで一度理解したことを、リアルな対面形式で行われる集団研修で実践する経験は、記憶の定着に効果的なものとなります。
受講者の交流機会を創出
ブレンデッド・ラーニングの場合、集合学習の場は受講者同士のコミュニケーション機会創出にもつながります。
eラーニングは、自分のペースで学習を進められるメリットはありますが、モチベーション維持が難しい面があるのも事実です。
そのような場合にも、定期的に集合学習の場で受講生同士が交流できるブレンデッド・ラーニングは学習意欲維持や、切磋琢磨する貴重な場となり得ます。
一度集合学習で顔を合わせたメンバー同士が、チャットツールなどを駆使してコミュニケーションを図るケースも珍しくありません。
リアルで一度会っているメンバーと、意見交換しながら学びを深めていくことも可能なのです。
学習にリズムが生まれる
ブレンデッド・ラーニングは、集合学習を定期的に実施することにより、個別学習に目的意識やリズムをつけられるメリットがあります。
オンライン完結の学習方法であるeラーニングの場合、一人ではなかなか自分を律することが難しい場面も出てきます。
モチベーションが保てず、途中で挫折してしまうケースもあるかもしれません。
しかし、個別で行うeラーニングをベースとし、その合間に集団学習を挟むブレンデッド・ラーニングなら「いつまでにeラーニングを終わらせなくては」と、分かりやすく学習にリズムづけを行うことが可能です。
また集団学習の場で刺激を受けることで、学習への意識をより高め、モチベーションアップへとつながります。
ブレンデッド・ラーニングには注意点もある?
メリットばかりのように見えるブレンデッド・ラーニングですが、実施するには注意すべきポイントもあることを理解しておきましょう。
注意するべきポイントを押さえ、そのうえで実施することが、ロスをなくす最大のコツとなります。
研修プログラムの構築にかかる負荷が増す
ブレンデッド・ラーニングを導入するには、まずプログラムを構築する必要があります。
教材を作成するためには、人事担当者や研修担当者といった研修教材構築に携わるすべての担当者間ですり合わせを行い、ベストと考えられるコンテンツや学習順序をつくり上げていくことが必須です。
お互いが担当する研修に互換性・関連性を持たせることが、スムーズな学習につながります。
従来型の集合学習では、それぞれが独立した学習として研修を進めてきたものに関連性を持たせ、連続性を確立させるためには、研修担当者同士が密接に連携する必要がある、ということです。
研修プログラム構築には、これまで以上に負荷がかかるということを理解しておきましょう。
eラーニングと集合研修を効果的につなげる必要がある
ブレンデッド・ラーニングは、集合学習の内容はeラーニングでの内容を発展させたものである必要があります。
eラーニングでベースとなる部分を理解し、それを実地で学ぶ場が集合学習となりますから、その2つの学習スタイルを融合させる必要があります。
効果的につなげることができれば学習効果はより高いものとなるため、eラーニングの内容と集合学習の内容をうまくリンクさせ、連続性を持たせましょう。
このような学習の流れづくりは、最初は手が掛かりますが、一度つくってしまえば今後継続して使用することが可能です。
今後、より効果的な研修を実施していくための一歩と考え、前向きに取り組んでください。
スケジュールの管理と調整
ブレンデッド・ラーニングでは、集合学習が学びの一区切りとなります。
eラーニングを行い、その後集合学習に参加することで、ロールプレイやプレゼンなどを通して学習内容をより深く理解し、知識を定着させることができ、疑問点があれば講師にその場で質問することも可能です。
このeラーニングと集合学習までのスケジュール調整も、なかなか難しいものとなります。
eラーニングと集合学習までの期間が空きすぎてしまうと、eラーニングで学習した内容を忘れてしまう可能性もあります。一方、集合研修同士の期間が短すぎると、eラーニングで学んだ内容が定着する前に次から次へと進んでしまい、消化不良を起こしてしまう可能性も考えられるでしょう。
ブレンデッド・ラーニングを効果的に進めるために、無理のない範囲でeラーニングの学習期限を設定すること、そして集合学習をバランスよく実施することが重要なポイントです。
これらを理解したうえでスケジュールを組むことが成功への鍵となりますが、最初からうまくいくというのはレアケースであることを理解しておきましょう。
eラーニングと集合学習のバランスは、回数を重ねながら調整していけばよいくらいのスタンスで考えておいてください。
最初に決めたスケジュールを頑なに守る必要はないのです。
集合学習の設定は、eラーニングの進捗管理につながります。
学習者に負担をかけすぎず、しっかりと学習を進められるようにスケジュールを調整することも、重要なポイントと考えておきましょう。
また、リアルな集合学習は頻繁に開催することが難しい場合でも、オンラインで週1回、月2回などと定期的に集合学習を実施する方法も有効です。
自分一人で学習を進めるのではなく、一緒に学習する仲間がいるということは、大変刺激になります。
上手にオンラインディスカッションや勉強会を設定し、学習者同士学びを深められるように環境を整えましょう。
適切なグループ分けを行う
ブレンデッド・ラーニングの集合研修を行う際には、グループ分けも重要なポイントとなります。
ランダムに構成されたメンバーでは、理解度や進捗に開きが出てしまう可能性があるため、バランスを考えたメンバー構成が必要です。
理解度別にグループを編成するのもひとつの方法です。
理解度が低い学習者同士の場合、お互いに分からないところを補完しながら学習することで「自分も頑張ろう」と意識を高めることができます。
理解度が高い学習同士でグループを構成すると、さらなるレベルアップを見据えた課題を講師が課すことも可能となるため、結果的にグループ全体のレベルアップを図ることが可能です。
また、理解度の低い学習者のなかに、一名だけ理解度の高いメンバーを入れるという方法もあります。
グループ編成に工夫を凝らすことで、参加者が刺激を受け合い、より能動的な学習効果を高めることが可能となるのです。
ブレンデッド・ラーニングの活用事例
では、最後にブレンデッド・ラーニングの活用事例として、IBMで実施されたケースを紹介しましょう。
IBMでは、次のようなラーニングモデルをベースとして、各種研修の設計を実施しています。
業務支援・参照資料をインターネット経由で提供
Web講義やeブック、Webページ、動画といったコンテンツをインターネット経由で提供。コンテンツを活用し、基礎・基本となる知識を習得する仕組み。
インタラクティブ・ラーニング
eラーニングや自主学習用モジュール、コーチング・シミュレーション、インタラクティブゲームなどを、マルチメディアで提供する仕組み。
コラボレーション型学習の展開
ライブ仮想教室、電子会議、バーチャルグループワークなど、講師と受講生がコンピューター上におけるやりとりを通して、学習を進める仕組み。
集合研修実施
集合研修、ロールプレイ、ケーススタディ、メンタリングなどの対面学習。
この事例からも分かるように、ブレンデッド・ラーニングは集合研修とeラーニングだけにとどまらず、コーチングやインフォーマル・ラーニング、業務支援などにも対応したものに進化し続けています。
IBMでは実際に、こういったラーニングモデルを基盤として社内研修の設計を実施し、集合研修やeラーニングなどのバランスを職種によって設定しながら、ストレスをかけずに学習を進められるような研修の仕組みを作っています。
ブレンデッド・ラーニングで効率良く人材育成を
時間や場所を選ばずに、自分のペースで学習できるeラーニングは、学びに非常に有効な手法です。
ただ、eラーニングのみで学びを完結させるには難しさもありました。
その代表的な課題である、講師に直接質問できない点や、受講生同士の交流の機会が持ちにくいという点をクリアにしたのが、ブレンデッド・ラーニングです。
新型コロナウイルス感染症感染予防の観点からも、時代に即したニューノーマルにおいて再注目されるブレンデッド・ラーニングを上手に活用し、社員育成に役立ててください。