リーダーシップを発揮する社員の具体的な行動8選
1 on 1ミーティングとは?
1 on 1ミーティングは、これまで多くの企業で行われてきた1対1の上司との面談とは違い、主導権を持つのは部下が基本です。開催頻度も週に1回、または月1回と定期的に開催します。
内容としては、部下が抱えている悩みや、業務課題などを上司と共有し、それに対して上司がフィードバックを行うというスタイルです。
これまで実施されてきた1対1の面談は、その多くが人事考課に関わる面談です。
その場合、上司が主導権を握るのが一般的で、上司から部下に対して一方通行型に行われるケースがほとんどでした。
一方、部下が主導権を握る1 on 1ミーティングでは、部下の自主的な活動を促し、サポートすることに上司が徹します。
1 on 1ミーティングでは、上司と部下のどちらが正解ということはありません。
1 on 1ミーティングにおいては上司と部下はあくまでフラットな関係であり、上司は傾聴に徹する必要があります。
このような関係性を構築することで、従来の1対1の面談では「評価に響くのでは」と自分の課題や悩み、気持ちなどを吐露することができなかった部下も、1 on 1 ミーティングなら心を開いてさまざまなことを相談しやすくなる効果が期待できます。
1 on 1ミーティングを実施するメリット
1 on 1ミーティングを実施するメリットには、次のようなものがあります。
・自分の仕事に対して、部下が定期的に振り返りを行うことが可能
・振り返りを実施し、課題設定を行う1 on 1ミーティングを定期的に行うことにより、経験学習のサイクルができる
・エンゲージメント向上
・離職防止
・会社内にある諸問題に上司が気づくきっかけとなり、その早期解決が可能
・上司と部下の信頼関係構築により、社内活性化にもつながる
このように、対話性の高い1 on 1ミーティングでは、質の高いコミュニケーションを図ることが可能です。
従来の1対1面談では、どうしても部下のプライベートな情報などを引き出しにくい傾向にありました。
また、気がつくと上司が自分の話をしている、というケースも散見されていたのが実態です。
1 on 1ミーティングではプライベートな雑談からキャリア支援まで、幅広い対話を行うことを目的としていますから、上司は部下の話に傾聴するのが基本となります。
1 on 1ミーティングでは評価もしないため、ノンストレスな状況で、部下が上司にあらゆることを相談できる場として活用しているケースも多くなっているようです。
信頼関係の構築
1 on 1ミーティングで部下の持つあらゆる事情や背景を上司が把握することで、研修や教育方法などに反映することも可能です。
部下としても、自分によりフィットした形で上司が対応してくれる姿勢を感じられます。
この上司の寄り添う姿勢は、部下の仕事に対するモチベーションアップにもつながります。
その結果として、会社内にある問題の顕在化や、風通しのいい職場環境を整えることにもつながり、好循環が生まれることが期待できるのです。
一方的に評価を下す1対1の面談とは違い、質の高いコミュニケーションを継続して行う1 on 1ミーティングは、社内全体の士気を高める効果が期待できます。
課題の発見や解決を通して成長につながる
部下自身が課題に気づくことができていない場合にも、1 on 1ミーティングは大変有効です。
上司が導くことで、部下自身が自分で課題に気づき、解決していく経験ができます。
上司としても、部下の性格や特性を理解したうえでアドバイスができるというのは、業務効率化につながるだけでなく、視野を広げ、さまざまな価値観に触れ、上司自身も成長することが可能です。
エンゲージメントの向上
プライベートな話でも、業務上の課題でも、なんでも相談できる相手が会社に存在するというのは、部下にとって大変心強いものです。
会社に対して不満がある場合でも、早い段階で上司がそれに気づき、対応可能となるため、会社へのエンゲージメント向上も実現できます。
1 on 1の実施にデメリットはある?
1 on 1ミーティングにも、デメリットはあります。
具体的にどのようなデメリットがあるのかを把握し、対処していくことが大切です。
時間がかかる
1 on 1ミーティング最大のデメリットは、即効性はあまり期待できず、時間がかかることがまず挙げられます。
長期的に取り組むことで、初めて効果が期待できるのが、1 on 1ミーティングと考えましょう。
また、週に一度、30分の1 on 1ミーティングを実施すると決めた場合、その時間確保が難しいケースも考えられます。
そのため、1カ月、2カ月実施してみて「効果がさほど感じられないから」と実施を見合わせてしまう企業も多いのが実情です。
しかし、1 on 1ミーティングの効果を実感するためには、少なくとも半年以上の時間が必要です。
1 on 1ミーティングを重ねることで、部下が自分で考えて、動くことができるようになるためには、時間が必要となります。
継続的に1 on 1ミーティングを重ねて、焦らずに、少しずつその成長を見守ることが重要であることを、上司はしっかりと認識しておきましょう。
効果が出るかは上司のスキル次第
1 on 1ミーティングの効果が出るかどうかは、上司のスキル次第という面が大きくあります。
というのも、1 on 1ミーティングを実施しているうちに、気がつくと、つい従来型の面談時のように指導を始めてしまう上司が多いためです。
上司が指導してしまっては、部下が自分で考えて、行動できるようにはなりません。
あくまで部下自身が考えて、自主的に行動を起こせるようにすることが1 on 1ミーティングの目的です。
上司は、そのために環境を整えたり、機会を設けたりすることが仕事となります。
それを理解して部下の話を傾聴し、自主的に解決策を発見できるように誘導するスキルが上司には求められます。
逆に信頼関係を損ねるリスクも
せっかく1 on 1ミーティングを実施しても、上司と部下の相性があまりにも悪い場合や、上司がつい自分の考えや意見を押し付けてしまうと、信頼関係を損ねてしまうリスクがあります。
1対1で上司と話をするというのは、非常に緊張するものです。
その相手が苦手な上司となれば、なおさらというのは想像がつくのではないでしょうか。
部下のモチベーションをアップさせるための1 on 1ミーティングが、逆に部下を落ち込ませるものとなっては本末転倒です。
アドバイスやサポートを行うメンターと、後輩として相談するメンティーという関係性であればいいのですから、場合によっては、直属の上司と部下でなくても構いません。
相性の良いメンターとメンティーをマッチングすることが、1 on 1ミーティング成功への近道と考えましょう。
1 on 1ミーティングがうまくいかない場合の理由とは?
1 on 1ミーティングがうまくいかない理由は、部下側、上司側、それぞれに考えられます。
ミーティングすることが目的化してしまっている
特に上司側にありがちな問題として、1 on 1ミーティングを実施することが目的となってしまい、その内容について熟考されていない場合があります。
「この時間は、とにかく部下のためだけに使う時間である」という認識を上司がしっかりと持っていないと、部下主導であるべき1 on 1ミーティングの場を上司が仕切り始めてしまう傾向にあるのです。
部下主導である認識が薄いうえに「内容はともかく、ミーティングをすればいい」という考えで上司が1 on 1ミーティングを行うと、有意義な1 on 1ミーティング開催は困難になります。
その場だけの話になりアクションが伴わない
部下側が抱えがちな問題としては、本質的な悩みや課題などを切り出しにくく、表面的な時間にしてしまいがちというものがあります。
部下自身、今どのような課題を抱えているか、業務の進捗状況はどうかなど、自分の仕事に対する問題を的確に把握できていない場合に起こりがちな問題となります。
そのような場合、1 on 1ミーティングの時間をとにかくやり過ごすことが目的となってしまい、せっかくの機会を有効活用できなくなってしまうのです。
具体的な問題が分かれば、解決策や改善方法を上司としても提示でき、アクションにつなげることもできます。
実施前にはぜひ、部下に仕事に対する課題を洗い出しておくように伝えておきましょう。
よりよい1 on 1ミーティングの実施に必要なこと
より充実した1 on 1ミーティングを実施するためには、事前準備が必要であるということを、上司側も部下側も理解しておきましょう。
そのために、準備しておくべきことを解説します。
あらかじめ双方が目的を理解しておく
1 on 1ミーティングを実施する際には、部下の業務内容を双方で共有しておきます。
そのうえで、期限を設けての達成すべき目標を設定し、その目標達成度合いを適宜測る指標を具体化しましょう。
ここで強く意識したいのが、あくまで人事考課のためのミーティングではないということです。
業務の話になると、部下は「評価につながるのではないか」と、つい不安になります。
1 on 1ミーティングはあくまでアドバイスや相談の場であり、人事考課には関係ないということを両者ともにしっかりと理解しておくことが必要です。
そのうえで目標を決め、目標に対してどの程度達成できたかを振り返る基準を明確化します。
そうすることで「達成した」「達成しなかった」がはっきりとし、なぜ達成できなかったのか、どうすれば達成できたかを部下自身が理解しやすくなります。
設定する目標は、難しいものである必要はありません。
スモールステップで、達成感を感じながら業務に取り組む姿勢を身に付けることを最初の目標と考えて1 on 1ミーティングを展開していきましょう。
ミーティングで話す話題の設定
「1 on 1ミーティングで、何を話したらいいか分からない」という話を耳にすることがあります。
何を話すか迷っているうちにミーティングの日になってしまっては、せっかく設けた場を活かすことができません。
そのようなことにならないためにも、アジェンダの設定が重要と考えましょう。
アジェンダとしては「業務上で課題と感じていること」「専門性を高める方法」「キャリアビジョン」「メンタルや体調」などが候補として考えられます。
あらかじめアジェンダを、上司と部下で共有しておきましょう。
そのうえで1 on 1ミーティングを展開すると、より高い効果が期待できます。
PDCAをまわす
アジェンダを設定したら、次はPDCAをまわす意識を持つことが、1 on 1ミーティング成功のヒントとなります。
Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)を繰り返しながら、業務改善を目指すことで、1 on 1ミーティングの場をより有意義なものにすることができます。
部下を主体にミーティングを進める
1 on 1ミーティングを実施する際には、とにかく部下主体であることを意識しましょう。
上司は部下の話を途中で遮ったり、意見に対して見解を述べたりする必要はありません。
1 on 1ミーティングの場では聞き役に徹し、必要な場合は対話しながらアドバイスをするようにします。
フラットな関係で意見交換ができる場であると部下も実感できれば、1 on 1ミーティングは大変有意義な場となりますし、上司にとっても若手の意見を直接聞くことができる、貴重な場となるはずです。
上司は新しい価値観を知り、部下は自分で考えて動く実行力を手に入れる「1 on 1 ミーティング」
1 on 1ミーティングは、部下自身が自分の課題に気づき、それを改善する取り組みを機動的に行えるようになる効果が期待できます。
また、上司にとっても新しい考え方や若い世代の価値観などに触れる機会となり、成長の場となりえるでしょう。
即効性が感じにくい取り組みではありますが、結果的に企業全体の課題顕在化にもつながります。
そのためには、通常業務に支障が出ない範囲で、定期的にミーティングを行えるように設定することが重要です。
1 on 1ミーティングのために時間と工数が増え、残業が増加するようなことがないように、無理なく実施できる環境を整えていきましょう。