リーダーシップを発揮する社員の具体的な行動8選
社員教育を行う目的
社員教育を実施する目的は、「企業理念の浸透」「生産性の向上」「コンプライアンス意識向上」「企業イメージ向上」「セキュリティ対策など情報リテラシーの向上」の5つです。以下、それぞれについて詳しく説明していきます。
企業理念の浸透
社員教育で理念・ビジョンを浸透させれば、社員の愛社精神・エンゲージメントが向上します。単に担当業務のやり方を説明するだけではなく、目的・意義まで浸透させることが大切です。
単純な作業であっても、「このような目的がある」と正しく理解していれば、会社に対する貢献を実感しやすくなり、モチベーションのアップに結び付きます。
生産性の向上
「平成30年度年次経済財政報告」において、「1人当たり人的資本投資額の1%の増加は、労働生産性を平均0.6%程度増加させること」および「労働生産性が低い企業ほど、効果が高いこと」が示唆されています。
仕事に必要な知識・スキル・ノウハウを伝授すれば、生産性が向上し、企業の業績向上に繋がることが期待されるので、社員教育を実施して従業員の能力を高めましょう。
参考:内閣府「平成30年度年次経済財政報告」pp.176-177
https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je18/pdf/p02022.pdf
コンプライアンス意識向上
近年、「コンプライアンス(法令遵守)」が強く求められる時代になりました。社外でルールや社会的規範を守って行動するのと同時に、社内でもコンプライアンス違反が起こらないように、社員の意識を向上させなければなりません。
パワー・ハラスメントのような不祥事が発生すると、優秀な人材の流出に繋がります。少子高齢化によって人手不足が深刻化するなか、労働環境の改善によって社員の定着を図るためにも、コンプライアンスに関する社員教育を実施してトラブルを未然に防ぎましょう。
企業イメージの向上
接客や商談の際、社員は「企業の代表」としての自覚を持つ必要があります。接客マナー・ビジネスマナーが身に付いていない場合、社員1人の問題にとどまらず、企業全体の信頼を損ねることになりかねません。
社員教育を通じてマナーを身に付けさせ、一人ひとりに「会社を背負っている」という意識を持たせてから現場に配属すれば、企業イメージの向上に繋がります。
セキュリティ対策など情報リテラシーの向上
IT機器が進化し、大容量データの持ち運びが容易になりました。その結果、個人情報を含む大量のデータが社外に流出する事件も発生しており、情報漏洩に対する備えは企業にとって必須のものとなっています。
また、「社外から送られてきたメールに添付されているファイルを不用意に開いて、システムにコンピューターウイルスが感染してしまう」といった事態に陥らないようにするためにも、社員教育を行って情報リテラシーを高めておく必要があります。
今の時代に必要な教育とは?
2020年に世界中を襲った新型コロナウイルス感染症の流行。2021年もコロナ禍が続くなか、企業はリモートワークへの対応を求められており、ジョブ型雇用への移行も急速に進んでいます。
コロナ禍における社員教育では、「セルフマネジメントスキルを高めること」および「育成の仕組みをオンライン化すること」の2つが必要です。以下、それぞれについて説明していきます。
セルフマネジメントスキルが重要
セルフマネジメントスキルとは、「目標達成のために、自分自身を律して管理する力」を意味します。コロナ禍でリモートワークを行う機会が増え、多様な働き方が広がるなか、「自律して働き、結果を出す力」は不可欠なものといえるでしょう。
在宅勤務においては、「業務のプロセスが見えにくい」という問題があります。そのため、「自己の成長を数字で示す力」や「上司からの細かい指示がなくても、何をすべきかを考えて実行できる力」を各社員が身に付けなければなりません。
また、さまざまな働き方をする社員が増えるなか、勤務時間や勤務態度ではなく、「仕事の成果」を軸に人事評価を行う企業も増加しています。多様な働き方を容認しつつ、高い業績を実現するためには、社員のセルフマネジメントスキルの育成が必要です。
育成の仕組みをオンライン化する必要も
コロナ禍で、リモートワークを導入する企業が急増しました。リモートワークをする社員が多くなれば、育成の仕組みもオンライン化しなければなりません。
オフィスにおける対面研修とは異なり、パソコンの画面越しのトレーニングでは、項目ごとに時間を短く区切って受講者の集中力を途切れさせないようにする工夫が必要です。
また、学習管理システム(Learning Management System)を導入して、各社員の進捗状況や学習効果の検証をすることもご検討ください。
社員教育を行う場面とは?
社員教育は、「入社」「本配属」「昇格」といった節目のタイミングで実施しましょう。加えて、「継続的な教育の機会」を提供する必要もあります。以下、各場面における教育内容について説明していきます。
入社前後
新入社員は社会人経験がないため、ビジネスマナーを一通り教える必要があります。また、会社の理念や経営方針、ビジョンも覚えてもらいましょう。入社前の内定者に対して、不安を解消したり意識転換を促したりするために、教育・研修を実施するケースもあります。
本配属
新入社員に対する教育が終わって各部署に本配属されたら、実際の業務内容や流れ、ノウハウをOJTや現場研修という形式で覚えてもらう必要があります。社員一人ひとりに専任の教育担当者がついて指導する場合や、集合形式で講義を行う場合があります。
マネジメント層への昇格
マネジメント層・管理職には、「チームを率いるリーダーシップ」「会社からのメッセージを部下に伝える力」「別部署との連携」といった能力が求められます。そのため、マネジメント層・管理職に昇格した際に、これらの能力を習得させるための教育を実施しなければなりません。
継続的な教育の機会
「入社」「本配属」「マネジメント層への昇格」といった節目で実施する教育とは別に、継続的に学ぶ機会を用意することも重要です。なお、座学形式の研修だけではなく、仕事のやり方を振り返ってもらうために1on1ミーティングを定期的に実施し、上司からフィードバックを行いましょう。
おもな社員教育の方法
おもな社員教育の方法は、大きく分けて「OJT」「OFF-JT」「1on1」の3つです。以下、それぞれについて詳しく説明していきます。
OJT
OJT(On the Job Training)とは、通常の業務を遂行するなかで、先輩や上司などから必要な知識を学んでいく方法です。
新入社員が各部署に本配属された直後や、全く別の部署に異動した直後は、業務のやり方がわからない状態が普通です。そのため、OJTで実践的なノウハウを学びながら、業務を遂行していくことになります。
OFF-JT
OFF-JT(Off the Job Training)とは、通常の業務を離れ、「集合研修」「eラーニング」といった形式で行う教育方法です。大人数に対して一斉に知識をインプットする際に活用しましょう。「現場で業務を遂行しながら」という形では学びにくい事柄(理論、基礎知識など)を、座学で学習するのに適した方法です。
OFF-JTの実施形態について、おもな2種類をご紹介します。
集合研修
集合研修では、社員を一か所に集め、座学形式で教育を行います。同じ空間に集めることで、互いに切磋琢磨する雰囲気が生まれ、モチベーションの向上に繋がります。その場で質疑応答が行われるため、理解が深まりやすいこともメリットといえるでしょう。
eラーニング
eラーニングとは、インターネットを利用した学習方法のことです。インターネットに接続できる環境とパソコン・スマートフォンがあれば、自宅からでも受講可能です。「学習履歴や成績の管理が可能」「教材の更新が容易」「受講者ごとに個別のプログラムを構築できる」といったメリットがあります。
多様な働き方が求められる時代になり、また、新型コロナウイルス感染症が流行していることもあり、リモートワークを行う社員が増えました。オフィスから離れた場所でリモートワークをしている社員に対しては、eラーニングで教育を実施しましょう。
1on1
1on1ミーティングとは、「週に1回」「月に1回」といったペースで、定期的に上司と部下が1対1で行う面談・話し合いになります。業務を遂行するうえで悩んでいる事柄を、対話を通じて解決に導くことが可能です。
社員教育プログラムを考えるポイント
ここからは、社員教育プログラムを設計・計画する際に考慮すべき点を、4つのステップに分けて説明していきます。
組織の現状把握と課題設定
まず、組織の現状を正しく把握し、解決すべき課題を見つけましょう。会社の中でも、経営層、営業、製造現場(工場)といった部署・部門ごとに、抱えている問題が異なります。さまざまな部署・部門に対して丁寧なヒアリングを実施し、解決する必要のある課題を抽出してください。
教育の目的を明確にする
次に、解決すべき課題を基に、教育を実施する目的・目標を明確に定めなければなりません。例えば、「会社に対するエンゲージメントが低い社員が多い」という問題がある場合は、「経営理念・ビジョンを社員に浸透させ、会社に対するエンゲージメントを高める」という目的を掲げると良いでしょう。
各教育の内容と実施タイミングを決定
目的が明確になったら、具体的な内容や、実施するタイミングを決定してください。例えば、「接客マナーの向上」という目的の場合、「集合研修で一通りの立ち振る舞いを習得させたうえで、現場で接客をしながらOJTで学ばせる」といった具合に、目的に応じて内容を変えましょう。
また、実施するタイミングについても、設計・調整しなければなりません。入社、本配属、昇格といった節目ごとに社員教育を実施するだけではなく、「認証の取得」と連携して実施するケースもあるでしょう。自社の状況に応じて、余裕を持ってスケジュールを組む必要があります。
教育の定着のための支援を計画に入れる
ドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスの研究によると、「新しく学習したことは、すぐに忘れてしまって、定着しない傾向がある」と判明しています。なお、「記憶の保持と忘却」に関する時間経過を示す曲線のことを「エビングハウスの忘却曲線」といいます。
エビングハウスの忘却曲線では、学習してすぐに激しい忘却が起こるものの、その後に再学習を実施することで忘却が緩やかになっていくことが示されています。つまり、教育内容の定着には、定期的な再学習が欠かせません。社員教育の設計を行う際は、定期的なフォローアップを実施するための支援計画も組み込みましょう。
まとめ
社員教育には、「企業理念の浸透」「生産性の向上」「コンプライアンス意識向上」「企業イメージの向上」「情報リテラシーの向上」といった目的があります。
昨今では、セルフマネジメントスキルの育成が重要になっています。また、リモートワークを行う社員が増えるなか、育成の仕組みをオンライン化する必要もあるでしょう。
入社前後や本配属、昇格といった節目のタイミングで社員教育を実施するだけではなく、日頃から継続的な学習機会を提供することも忘れてはなりません。そして、OJT、OFF-JT、1on1ミーティングといった方法から、状況に応じて適切なものを選択してください。
社員教育プログラムを設計する際は、まず、組織の現状を正確に把握し、課題を見つけましょう。そのうえで、教育の目的を明確にし、内容や実施するタイミングを決めてください。教育内容を定着させるための定期的なフォローアップも、計画の中に組み込んでおく必要があります。
本記事の内容が、企業で社員教育を担当している方のお役に立つことができれば幸いです。